保健室から連れ出され、そのままズルズルと図書室まで来ていた。
中に入り、いつもの椅子に私を座らせると、その隣に陸も腰掛ける。

私は、膝の上でぎゅっとスカートを握りしめ俯いたままでいた。

お昼休みの図書室。
静けさは、いつもと変わらない。

普段なら、その静かな空間に居心地の良さを感じていたはず。
けれど、今は陸と二人。
この空気に圧迫感で、いたたまれない。

「未知……。具合、大丈夫?」

気遣う陸へ、声を出す代わりに小さく頷いた。

陸の右手が、私の額に触れる。
心配をするその声はいつもの優しい声で、触れたその手もいつもの温かさだった。
さっき怒った声とは、似ても似つかない温かみのある声。

けれど、私はまだ顔を上げられず、スカートを握った手も緩まない。

私と瞳が合わない事で、額に触れていた陸の手が力なく離れて行く。

「さっきは……ごめん。怒鳴ったりして……」

窓ガラス越しに入る夏の日差しは眩しすぎるほどで、その光が何もかもを明るみにしていきそうなほどにギラついていた。

「未知は、泉君に惑わされてるんだよ……」

惑わされている?

「自分の気持ちばかり無理に押し付けてきて、未知の気持ちなんて少しも考えてない……。未知が泉君のことを好きならとっくに二人は付き合ってたはずでしょ? 俺が現れるずっと前からそうなっていたはずだよ……」