梅雨明け前の教室内。
ザワザワとしているいつものクラス。
自分の席に着き、私は窓の外へと視線を走らせる。

降り続く雨は変わらずだけど、その量が日増しに減っているのは確かだった。

あの日以来、黒谷は一切私に関わってこない。
話しかけてくることも、刺す様な視線も一切ない。

それどころか、私や陸と視線が合うだけで、怯えたように目を逸らす。

屋上で陸に怒鳴られたのが、効いているのだろうか……。
それとも、私が倒れてしまった事に、罪悪感を抱いているのだろうか。
どちらにしても、大人しいものだった。

泉は、以前と同じようにこのクラスに来るものの、やはり黒谷と同様で、私の傍にくることはなかった。
正確には、陸がいつも傍にいることで、近寄る事を躊躇っているようにみえた。

前にある席の傍で友達と楽しく話し、笑い、騒いでいる。
そんな風に、少し見た感じでは、以前となんら変わらないようにみえる。

けれど、時折送られる視線は、私の瞳を執拗に絡めとる。
ジッと見つめられるその瞳は、私と陸の事を責めている様に感じられてならない。

あれほど言ったのに、結局はそうやって二人でいることを選んだのか、と責められているような気がしてしまうんだ。

泉の言葉ない抗議の視線に、居た堪れなくなりいつも私は目を逸らす。

息苦しい瞬間。

そんな時、陸は決まって私の肩に手を置いたり、見えない位置で手に手を重ねたりする。
「未知」と優しく名前を呼びながら、私に触れる。

それが合図のように、私の呼吸は楽になっていった。

陸が傍にいてくれるこの環境の中に、私は自分の居場所を見つけ出していた。