―――― 想いの種類 ――――





屋上で倒れてからというもの、陸は私の傍を離れなくなった。
少し顔色が優れないだけで、額に手を当て熱はないかと心配したりする。

外出時も常に一緒。
コンビニへ行くときも、本屋へ行くときも。
必ず一緒についてくる。
学校の登下校ももちろんの事、休み時間もお昼休みも、私の傍を離れようとはしなかった。

保健室で、陸の背に手を回した時。
距離を置こうと決めたはずだったのに、私は陸を拒めずにいた。

泉にあれほど言われた事なのに。
泉が示唆した通りになって行く自分がいた。

けれど、私はその環境に安心感を覚えていた。
まるで、一緒にいることが当たり前のようで、離れることなど考えられなくなっていたんだ。
陸がいなくなると考えるだけで、自分の身体が二つに裂かれていくような感覚に陥ってしまうほどに。

それが、泉の言う男と女の愛情からなのか。
家族愛からなるものなのか。
まだ、判断はつかないけれど……。

「未知。母さんに買い物頼まれた。一緒に行こう」

私の部屋へ顔を出し、買い物へと陸が誘う。

勉強机を前に、私は窓の外に目をやった。
梅雨の雨は鬱蒼と辺りを重く湿らせ、暗い色で包み込んでいる。

パタリと宿題のノートを閉じ、私は戸口を振り返る。

「いいよ」

短く返事をし、クローゼットから薄手の上着を出して羽織る。

「お母さん、何が必要だって?」
「父さんのビール。切れてたの忘れてたんだって」
「そう」