泉といい、黒谷といい。
陸と一緒に居るのがそんなにいけないことなの?
血が繋がっていないことが、そんなにいけないことなの?
どうして陸と仲良くしちゃいけないのよ。

沸々と湧き上がる、やり場のない憤り。

それと同時に浮かぶ疑問。

何故私が陸と一緒に居たことや、泉と会っていた事を知っているの?

警戒心をあらわに、黒谷を見た。

「図書室。静かでいいところよね?」

ニヤニヤと含み笑いを浮かべ、黒谷が斜に構えた。

「どうして図書室にいること……」
「偶然よ、偶然」

クスクスと意地の悪い目つきをし、とわざとらしい笑い声をあげる。

「泉君があなたの事を探しているようだったから、親切に教えてあげたの。余計なことだった?」

組んでいた片手を口元に持って行き、含み笑いを浮かべている。

「泉君と陸君。喧嘩にでもなったら面白いと思ったんだけど。陸君て、おとなしいのね」

黒谷は、つまらない。と言わんばかりの態度をする。

そうやって話しながら、黒谷は少しずつ距離を縮めてきていた。
二メートルほどあった距離感が次第に狭まり、手を伸ばせば届くほどの位置になる。

「血が繋がってないってだけで、何でもありなのね」
「なに……言ってるの……」

泉との会話を盗み聞きしていたのか、またも持ち出される血縁関係。
腹立だしさに唇を噛む。

「ねぇ、放課後。時間ある?」

黒谷は、まるで遊びにでも誘うような口調で話す。
そうして訊ねておきながら、返事など待つことなく結論付けた。

「屋上で待ってるから」

威圧的な空気を残し、黒谷は私の横をスッと通り過ぎて行く。

一方的に決められた、約束。
あとに残された憤り。

「放課後……屋上……」

小さな呟きは、不安と共に静まり返った廊下に零れ落ちた―――――。