そんなことを思っていると…。
「なぁ?」
不意に東くんが話しかけてくる。
「……何?」
「背中の、とって?」
……あ、保冷剤のことかと理解した。
でも……手は、いまだ握られているままなのに。
「……手、離して」
でもそう言っても東くんは離してくれない。
……イラっ。
「離してって」
…………あたし、自分の意見を無視されることも大っ嫌いなんだけど。
基本、自分でも自分至上主義な性格をしていることは分かってる。
でも残念ながらこれがあたしの性格だ。
無理なものは、無理。
「……離せって、クソ野郎」
とつい、またいつもの癖が出てしまった。
「……あ?」
東くんのどすの利いた、顔からは想像もつかないような声を聞いて、瞬時に自分の言葉に酷く後悔した。
……今回はあたしが完全に悪いから怒っちゃダメなんだから。
自分、我慢しろ。
「ご、ごめんっ。つい、つい言っちゃっただけだから…本気で思ってないし、ね…?」


