でもなぜかその声色は明るく、クツクツと笑いを噛みしめているような声が聞こえなくもないけど…。
何?
寒いの好きなの?
と思った時。
急に東くんが、顔をこちらに向けてきた。
一瞬だけ、胸が小さく高鳴った。
でもそんなの一瞬だけで。
ただ急に振り向いて来たから驚いただけで。
気を紛らわすように声を出した。
「な、何?」
そして東くんは頭上にグダーっと伸ばしていた手をバンバンとベッドを軽く叩いた。
え、壊れたの?
思わず口に出しそうになったとき。
「寒いからさ、手ぇ握れよ」
何とも上から目線でビックリの要求をされた。
思わず暴言を吐きそうになったが、あくまでも東くんが怪我したのはあたしのせい。
ストーカー男が本当は突進なんてするから悪いんだけど、あいつもあたしのストーカーだからどのみちあたしが悪い。
……そりゃ男が勢いよくぶつかって、その上に倒れこまれたら背中なんて強く打つわな。
地面はコンクリートだし。
そう考えると、不本意すぎるけど東くんのいう事を聞かないといけない。
……まぁ手ぐらいいっか、と思って椅子をガガガと移動し、グーパーされている東くんの手を握る。
すると東くんもギューっと握り返してくる。
……あたしとは全然違う手だなぁ。
大きい。
骨が角ばってゴツゴツしてる。
それに温かい。


