大けがって程じゃないかもだけど、さすがにこれはキツイ。
「え、背骨って折れては……ないの?」
「背骨折れたら起き上がれねぇよ」
混乱していて、少し思考回路がおかしくなってしまっている。
「え、ちょ、どうしよ?これ、冷やすの?温めるの?」
「あー、そこの冷蔵庫の中に保冷剤入ってるはずだから、それで冷やして。で、机の上に置いてたはずの湿布をそのあと貼ってーー」
東くんの言葉を聞き終わる前に、立ち上がって冷蔵庫の扉を開ける。
冷蔵庫じゃなくて、冷凍庫みたいだけどそこには保冷剤がいくつかあった。
それを5個ほど取る。
……直接って冷たすぎるよね?
タオル、ハンカチ…って今何も持ってないし。
ぐるりと周りを見まわたすと、すぐそばに保冷剤を包む布みたいなのが置かれてあった。
それを拝借して保冷材に巻く。
「……東くん、ベッド寝転がってよ」
振り向いて東くんを見ると、ばっちり目が合う。
するとニヤリ、とほほ笑まれて東くんはシャーっとカーテンを開けてベッドにドサリと寝転がった。
あたしも保冷剤を持って東くんのもとへ向かう。
……その途中に落ちていた東くんの服を拾い上げて。
そしてベッドの端に置かれていたパイプ椅子を引きずって、東くんの真横に座る。
……目の前には上半身裸のイケメンだけど、ケガに意識が向いてそれどころじゃなかった。
それに顔はあたしの方じゃなくて向こう側向いてるし。
そっと保冷剤を1個だけ背中に乗せる。
その時少しだけピクリと動く東くん。
「……痛い?」
「……痛いけど、つめてぇ…」
……でも東くん、背中広いから保冷剤5個置いてもまだ痣の部分の方が広いかも。
まぁあんまり冷やしすぎてもダメだからこれでいいや、なんて自己解釈して残りの4個もどんどん置いていく。
「……やべぇ、つめた」
「…寒い?」
季節は春から夏に変わる変わり目。
暑くもないし、寒くもないという丁度いい気温だけど…。
何も着ずに、アイシングされたら寒いかも。
「んー、さみぃなぁ」


