あたしだけを愛しなさい






東くんは、あたしの手を離し慣れたように保健室にあったソファーへと腰掛ける。





その姿でさえ何か色っぽい。





さすが王子。





なんて、東くんに見惚れていた自分に気づく。





……自分、なにしてんの。






気を取り直して。





さて、あたしはどうすればいいのかと迷った時。





東くんはポンポンっと自分の隣のスペースを叩いた。




…そこに座れってこと?





東くんの顔を見ると、あたしをじっと見ていて。






少し距離を開けて、隣りに座った。





しかし…、





「もっと近くに来れば?」






……え。






意外なことを東くんに言われた。





「いや、普通はこのぐらいの距離だと思うけど…」





あたしがそう言っても東くんは聞いていないのか。







「…こっち来てって」






……あれ?




「東くんってそんな強引なキャラだっけ?」







イメージと随分違う。




イメージは王子様のように優しすぎる甘すぎる人かと思ってた。






「んなことどうでも良いだろ?もっと近づいてって」





「わけわかんないんだけど」






「あ?来いって言ってんだろ」






あぁ。






東くんってあれだ。






最近話題の俺様ってやつだ。





不機嫌に歪められた顔を見ながら理解する。






……やっぱり世の中には爽やかな優しい完璧王子なんて存在するわけないんだぁ。





改めてその事実を再確認。





「いや。あたし、人に命令されるのって大ッ嫌いなの」





ハッと笑いながらそう言うと、少し驚いたような表情をするが…。





ニヤリと、随分魅力的な笑みで微笑まれた。