西川愛梨side*
あたしの手を力強く握り、ずんずんと先を歩いて行く東拓都。
放課後は暇って理由で、試しに呼び出されて屋上に行った時、誰かいるのかと思えばこいつがいて流石にビックリした。
「王子」という代名詞で呼ばれるほどの人気者。
この学校一のイケメンで、とにかくモテまくっているらしい。
そんな人が、今あたしの手を握っている。
少し変な気分だけど。
まぁあたしを屋上に呼び出したのは、いつものしつこい3年のストーカー先輩で、あたしと間違えて東くんに激突したときは焦った。
その分、いつもよりも強力なパンチをお見舞いしたけど。
それでも気分は最悪。
イライラする。
あのストーカーがあたしに突進してくるのは一部では有名な話。
どこでも、いつでも、かしこでも、あたしを見かければ抱きつこうとする迷惑なやつだ。
でもあの迷惑糞ヤローのおかげで、極上の男と少しでも関わることができた。
ムカつくストーカーだけど少しは感謝。


