劣等審判

「石川…何いつも読んでるかと思ったら広辞苑かぁ」

 宮城が呆れたように言う。彼女は2-7で同じクラスでたまに挨拶をする。

「え?何で亜美知っているの?何?ストーカ」

 最後まで言う前に山口に蹴りが入る。しかし、先程の滋賀への蹴りの強さに比べ圧倒的に弱い。

「同じクラスだからに決まってんでしょう。まぁ…何か分厚い本読んでるのは知ってたけどブックカバーかけてたしな。実際何かは今初めて知った」

 広辞苑のサイズのカバーはほとんどなくて仕方なく余りの紙で自作することになった。

「そんなの読んでたらまぁ、普通の友達は出来ないわな」

 滋賀が軽いため息をする。その表情はどこか真剣で寂しそうだった。いつもの滋賀とは違う。

「そう言う君はどうなのかな?毎朝7:30に正門に立ち、可愛いと思われる女の子に先輩、後輩構わず声をかけて教室に連れて来ようとするのはどうかと思うけど?」

 山口は満開の笑みで言った。その言葉に滋賀は反応して、山口と少し距離をおいた。

「かんけーないけどね」

 山口は優しく笑い、早足で図書館に入った。

 もう2時限目はとっくに始まっている。人はいないはずなのだ。