「うん。だいじょーぶだよ?」
「えっ大丈夫そうに見えないよ。
わたし、体育の先生に目が覚めましたって言ってくるね」
結愛ちゃんが保健室から出て行くと、ドアの隙間から涼しい風が入った。
あれっ、晴れてる。
外で走っているのが、保健室の曇りガラス越しに見えた。
まだ走ってるんだ――…大変そう。
そこまで体調が悪いわけじゃないけど、また走る気力もないから寝ようかな――。
ゆっくりと目を閉じようとした瞬間。
「高梨」
保健室の窓が音を立てて一気に開いて、斎藤くんが顔を出した。
「わっ」
なっ何かじっと見つめられてる気が……。わたしは目を泳がせながら何か言おうとするけど、思いつかない。
「なっ……なに?」
「なにも」
何もないはずないでしょ……驚いた……。体育に命を賭けてるような男子の一人の斎藤くんが何でこんなところに。
体育が次のときいつも授業が終わった瞬間に教室を飛び出していること、わたしじゃなくてもクラスの人なら誰でも知ってる。

