「笑顔とか、言葉とか、あの日からいつも、元気もらえてる――…。嫌だった自分が少し変われた気がするの。まだ少しだけど。
だから、ありがとう……」
目を瞑って、伝わるように、伝わるようにと念じながら言葉をゆっくりと。
本当に伝えなきゃいけないことはそれじゃないけど――でも言いたかったこと。
ありがとう。
その気持ちは斉藤くんに対する想いを表す言葉の大半だ。
「――俺、ちゃんと笑えてる?」
意外な返答だった。
斎藤くんは椅子を後ろにひいて机にうつ伏せになると、どこも見てないような目で遠いところをぼんやりと見つめていた。
「俺、分かんないんだよな。ある人がいなくなってから。
友達と話すときも、家族と話すときも、強がって何もなかったように笑っててさ。
最近冷静になって、俺、本当に心から笑えてるのかって。
前の自分の笑った顔がどんなものだったかも、忘れた」

