「高梨も手止まってるしなー。じゃあ斎藤やってみろ」



わぁ……。何かの魔法みたい……。

斎藤くんが黒板の前に立つと、謎の数式が次々と書かれていった。


「おっさすが斎藤。正解。二人とも席戻っていいぞ」

「あっ……ありがとう」

「いーよ。眠いときはお互い様」



「じゃあ終わるぞー」



席に着いて終わりの挨拶をすると隣にいる斎藤くんをチラっと横目で見た。


眠そうにしてたの、斎藤くんに気づかれてたんだ…。

どうしよう、変な顔になってなかったかちょっと心配。聞いてみようかな。


あの日から、斎藤くんと小さな会話ならできるようになったわたし。

話題をわたしから振れるようになったし、大分口下手から進歩したと思う。



でも……一歩が踏み出せなくて。

手紙のことを言い出そうとすると、言葉は制御されて。


ファイルには、あの沢山の手紙が入ったまま。