洗面所から戻ってきた斎藤くんはズボンが少し濡れていて、顔色はいつもの色に戻っていた。
わたしの顔色は……まだ戻ってないかもしれないけど。
斎藤くんは手をポケットに突っ込むと、ホッチキスを取り出してわたしに見せるように手のひらに乗せた。
「職員室で借りてきたから、一緒にやろうぜ」
「うん」
積み重なる大量のプリントの半分以上を持ってわたしの隣の席に座る斎藤くん。
しばらく無言が続いて『カチ……カチ……』と規則的なホッチキスの音だけが教室の中で響いた。
今までの斎藤くんの行動を思い出しながら、単純作業を続ける。
あの強力な笑顔もそうだけど、飲み物買って来てくれた、手伝ってくれた。
こんなに見返りもなく優しい人なんて、いるんだね。
純粋で真っ直ぐな優しさ。
何でそんなに…。
「――…斎藤くんは何でそんなに優しいの?」
あ……口に出してるわたし。
何やってるんだろ、でも考えずに言葉が出るのはわたしにしては珍しい。
「そうか?それ言ったら高梨の方が優しいじゃん。いつも先生に頼まれたこと、進んでやってるし。
花の水やりとか、学級委員とか、誰もやらないからやったんだろ?
あと男子学級委員怒らない」

