「わたし、守ってもらいたかったわけじゃないよ。

ただ斎藤くんの、尚の気持ちを聞きたかった」


下を向いて顔を疼くめる。



「……好きだ」

「うん」


「離れても気持ちが変わらないことはもう春の時から分かってたはずなのに、俺は高梨を信じきれてなくて、逃げた」


「うん……本当は分かってた」



「高梨は?」

「わたしも……こんな大きな二度の初恋、忘れれるはずがない」



「……好き」



そう言うと斎藤くんは満足そうに、笑った。

その顔は離れる前の斎藤くんの笑顔に……近い気がする。


わたしは、ずっと言えてなかったんだ。『好き』という言葉を。

離れても忘れることができないほど、好きだったのに、言葉に出来てなかった。


斎藤くんを笑顔に出来るのなら、もっと早く、わたしは言うべきだったのかもしれない。


でもわたしは……伝えられないままじゃなかったんだよ。昔とは違う。



強く抱き締める力は徐々に解けていって密着させていた身体を少し離す。

わたしたちは少し潤んだ目を見合わせて、わたしがゆっくりと瞼を閉じると、唇を重ねた。