「ごめん。父さんが母さん病院に連れて行ってて、俺父さんが置いてった机の上のメモに気付けなくて……」
しばらく会ってないだけで顔つきも随分大人の男の人になった気がしたけれど、息を切らして走ってきた姿は高校生の斎藤くんだった。
「うん。大丈夫」
「でも手赤くなってる」
ギュッと握られた斎藤くんの手は走ってきたせいか温かかった。
包み込むような手に体温が徐々に伝わってきて、わたしの顔も熱くなる。
「誰にでもこんなことするの……?こんなことされたら、期待しちゃうよ。
もう逢うことないだろうと思って別れた元カノでも、急に離れた幼馴染みでも」
お母さんは斎藤くんに、春のこともわたしのことも全てを話したらしい、だから……意味は分かるよね。
「……誰にでもこんなことすると思うか?」
そう言われわたしは急にきつく抱き締められた。
わたしの頭を強引に優しく抱えながら、自分の方へ引き寄せるように。
ドキドキした。でもそれと同時にその温かさにホッとした。
「……ごめん。春も、高梨も、守れなくて」

