ーーそう、交通事故なんかじゃない。わたしは自らトラックにはねられにいった。
頭を強く打ったわたしは病院に運ばれ、命に別状は無かったものの、目が覚めると、わたしは優だと何の疑いも無く言っていたそうだ。
記憶を消すためには自分の人格さえも書き換えられないと、脳内が混乱するからではないかと、病院の人も言っていたらしい。
そんなこと……本当にあり得るのだろうか。
だってわたしは高梨 優。
春であった記憶なんて何処にもない。
急にあなたの前世は猫でしたと言われているようなものでしょ?
そのことをわたしに伝えた後のお父さんは泣いていた。
大人の男の人が泣くところを、初めて見た。
『春なのに…俺の娘と同じ顔なのに……全然違うお前が憎いんだよ‼︎顔も見たくないんだ‼︎』
『分かってんだ……もう無理だって。父さんは、何年経っても救えなかったことを後悔して、現実を受け入れられないだけなんだ……ぁあ…』
何かに囚われるように、嘆くように、懺悔するように。

