わたしは黙ってお父さんの次の言葉を待つ。
「その顔はもう覚悟は出来てるんだろうな」
「うん」
わたしは大きく頷いた。
お父さんは渋い顔をして、その顔はわたしを憎んでいるような顔にも見えて、恐怖に怯えそうになったけれど、わたしはじっとお父さんの言葉を待った。
ーー……
ただ早足で歩いてた。
止まって落ち着いて整理したいのに、何かに引き寄せられるように足が勝手に動く。
信じられない。
わたしがお父さんから春の正体を聞いて一番に口から出てきた言葉。
予想もしない答え。
そう、予想なんてできるはずないでしょ?
ねぇ、笑ちゃん。
わたしはスマホを鞄から取り出し電話帳からその名前を見つけ出すと、発信ボタンを押した。
「もしもし笑ちゃん……うん。お久しぶり。今日会える?そう。場所は……。
◯◯公園の大通りの前の時計のとこ」
ーーわたしが『佐藤 春』だなんて。
歩きながらひとつずつ整理するようにお父さんに言われたことを思い出した。
『都合の悪い記憶を全部消した春が今のお前』そうお父さんに言われた。
消したものは、自分の嫌だったこと、交通事故という書き換えられた記憶の原因になったことは全部。

