今まで、過去から目を背けるようにしてたからなのかな。

お父さんとのこと、思い出したくなくて、それと同時に過去も思い出さないようにしてた。



それに向き合おうとしたから……なのかもしれない。

そう考えると納得がいった。



アパートに着いて階段を登っていると向かい側の大きな家がよく見えた。


お金持ちなんだろうな。


順序よく並べられた綺麗な花とその中央に咲く桜が魅力的な、大きい庭。

豪邸、とまではいかないけれど普通の家より一回りは大きい。


それに比べるとわたしが前住んでいたアパートなんかボロボロで、階段を登る度に軋む音がする。



階段が軋む度に速くなる鼓動を抑えるように慎重に階段を登り、インターホンを押そうとすると、手が震えた。


ここで怖気ついたら何もかもの意味が無くなるんだよ?


大丈夫。大丈夫だから……わたし。


何度も言い聞かせてわたしはやっとのことでボタンを押した。