『でした』という過去形の単語が終わったことを告げていた。


卑怯だ、卑怯だよ斎藤くん……。

過去形にするぐらいなら、別れの手紙なんて一方的に書かないでよ。


『好き』なんて言わないでよ。


勝手に自己完結させないでよ。突然過ぎるよ。



小さな紙切れをギュッと握りつぶして、ゴミ箱に入れようとしたけれど、無理だった。



強く握られた拳がゴミ箱の直前で止まる。



「あぁ……‼︎もぅ‼︎」



バカ。斎藤くんのバカ。バカ。


走って二階に駆け上がって自分の部屋に入ると、わたしの机の奥の奥に紙切れを押し込んだ。


そうだよ。斎藤くんは自己中心的過ぎるんだよ……。


咄嗟にそんな言葉が出てきたけれど、斎藤くんがそんな人じゃないことはわたしが一番知っている。


ただの八つ当たり。


でも。

お母さんのことでチラシの裏にしか書けない程忙しい中、わたしのことを思い出してこんな小さな手紙をくれる。


そんな、あなたの優しさに捕らわれてるようで。


嫌。嫌い。

だけどそんな気持ちと同じくらい、いやそれ以上に斎藤くんのことが、好きだ……。


いつの間にか涙が流れていた。


それでも……どんなに想っていても、さよならは変えられない運命だった。