え?
斎藤くんが目を向けた方はわたしの家の方向。視線を移すと、わたしたちを見ているのはどうみてもわたしのお母さんだ。
「なんで……」
「……お久しぶりね、尚くん」
携帯電話が鳴った。
よく耳にする着信音。それは斎藤くんのポケットから聞こえる。
雨の中で何度も響いたその単調な音が、何故かわたしには何かの終わりを告げる不吉な着信音に聞こえた。
取らないで。お願い。
取ったら、終わってしまう。
幸せな時間も、夢のような時間も。
そう思ったのは何故だろう。
そんなわたしの願いとは裏腹に斎藤くんはスマホを取り出して耳に当てた。
「もしもし……え……は?……あぁ。な、んで。…わかった」
眉間に皺が徐々き寄って行き、表情が絶望に呑まれていくように変わっていった気がした。
「どうしたの?」
「母さん……自殺未遂……。すぐ……来い……」

