大きなスポーツバッグを肩にかけた野球部の集団が、わたしと斎藤くんの方をチラチラと見ては口々に何かを話している。

そういえば、クラスの子たちもわたしたちを見て、噂をするよう小さな声で騒いでたな。


興味のある積極的な女の子には「付き合ってるの?」って聞かれて「まぁ……な」って斎藤くんは気まずそうに答えてた。


返答に、困るよね。だって別れるまであと少しなんだから。


それでも、望んだのはわたし。

だから、もう少しだけ、もう少しだけ一緒にいさせてください。



「行こう?」


斎藤くんは笑いながら頭を少し掻いた。


「そんなことしなくても、言えばいいのに。付き合ってんだから」


「もう少しだけ、だけどね」


少し傘を前に傾けて、斎藤くんに聞こえないように隠しながら繰り返した言葉は、雨の音で掻き消されていった。