「……泣いてないよ。わたし、泣かないもん」


瞬くんには、弱い部分隠してきたから。あの雨の日のことがあってから、何回も何回も隠して。
優しい言葉をかけられる度に、唾を大きく飲み込んだ。


だから本当は泣き虫だなんて、知らないよね?



「……そっか。高梨さんは嘘つきだね」


目を細めて意地悪そうに笑う瞬くんにはもう何もかも全部お見通しなのかもしれない。



「全部、知ってるの?」


わたしがあの雨の日に泣いていたこと。

何回心配されても、笑って誤魔化してたこと。

そして本当は斎藤くんに行って欲しくないけれど。



どこかでまた仕方ないって諦めていること。




「さぁね。でも俺は意地悪だから、知ってても何も言わない。

尚みたいに自分の思ったことを全部伝えるのが正しいとは思わないしね」