同姓同名ってやつ。


短期間でいくら少し記憶が薄れているとしても、そんなに顔が変わるわけないし、それを言ったら高梨の方がよほど春に似ているからすぐに分かった。


緊張の糸が解けて、気疲れした俺は家で気を休めようと思った。


そしたら、家はこの様だ。




俺は一生母さんの寂しがりの気休め人形か。


仕方ないよな。家族の縁は切っても切り離せない。

何をされても捨てることができない母さんを、俺が守らないといけないんだよな。



昔から弱かったもんな、母さん。社長婦人として、色々気を遣っては疲れてた。


父さんは仕事。


弟も小さくて、小学校に入るまでの世話は何も出来ない母さんに代わって俺がやってたようなもんだし。



家族を守るのが俺の役目みたいなものだった。



俺は弱いところなんて見せたことない。心配なんてかけたくないし、まずかけても無駄だからだ。


――そうだよ、俺は頑張ってきた。家族のために。

それなのにさ……俺がいなくなった途端これはあんまりだろ。


家の状況から、父さんの代わりに俺が世話していたあの魚たちは今はどうなっているのかと考えると、恐ろしくて寒気がした。


でも俺はまだ、この家に帰る訳にはいかない。