勝敗はもう決まっているかのような、最後の賭け……してもいいかな。
もし、もしも斎藤くんが振り返ってくれたら、わたしは。
今の精一杯の言葉を伝える。
それでいいでしょ?
それぐらいすれば、わたしは諦めきれるんでしょ?
ーー最後の本当に、最後の賭けだ。
どれくらい背中を見つめたかな。
長い長い廊下だから随分時間が経った気がする。
髪が大きくなびくような風の中、小さくなるまで見つめても。
斎藤くんは、振り向いてくれなかった。
「春さんと、上手くいくこと願ってます」
今はそう思えなくても、もしかしたら、この片想いのことを思い出したとき、大切な初恋だったと思える時が来るかもしれない。
いや絶対、来る。
そう思った瞬間、斎藤くんが一瞬、わたしの方に振り返ったような気がした。
気のせいだよね。期待させないでよ。
え?
目を疑う程の速さでどんどん近付いてぬるように、大きく、鮮明になる斎藤くんの顔。
渡り廊下のドアがまた開いた。

