斎藤くんの問いには答えずに問いで返した。
わたしの気持ち、あの雨の日の時点で知ったんじゃないの?そういう意味も込めて。
「ごめん……」
「好きでもないやつにキスされて、困ったよな。高梨の優しさに甘えて、ごめん」
知らないんだ。斎藤くんはわたしの気持ち。
『好きだよ‼︎』
なんて言えない。
困らせるだけ。
でも本当は振られるのが怖いだけかもしれない。
わたしは今、振られる勇気なんて持ち合わせていない。今どころか、ずっと……。
何か行動を起こしたいのに、結局のところ大きなことは怖くてできない。
そんなわたしはいつまでも昔と変わらない。
分かってるってば……。
小さく心の内でつぶやいた。
「じゃあ、わたし行くね」
少しずつ手の力を緩め、腕を離してくれた斎藤くんに背を向けて歩き出す。
途中振り返って眺めた、渡り廊下のドアの小さな窓から見える後ろ姿。
わたしの方を振り返ってくれないのは十分に知ってる。

