わたし、何をした?何をされた?

何がしたかった?


走って走って、頭が回らなくてもう爆発しそうで、道の真ん中で立ち尽くした。


「うぇっ……」


気持ち悪くなってしゃがみこむけれど、吐きたくても、なにも出てこない。

出てくるのは自分自身に対する嫌悪感だけ。



バシャバシャと水たまりの音。どんどんわたしに近づいてくる規則正しい足音。

反射的に立ち上がった。


誰――?結愛ちゃん?


今は誰にも会いたくない。知らない人だったらいいのに、そう思いながら遠慮がちに振り向いた。



……瞬くん。



「大丈夫……?高梨さん」

「……」


「普通じゃないことぐらい俺にも分かるよ?」

温かい声……歪んだ顔、雨に濡れて塊になっている髪の毛。


「――…何がしたかったんだろう、わたし」

独り言のように呟いた。