田中くんと初めて会話を交わしてから1ヶ月くらい経っていた。


田中くんは相変わらず授業はサボってばっかだけど、
放課後とかにたまに仕事を手伝ってくれる。


ある日の放課後。

田中くんが私に言った。

「谷口さー、そろそろ田中くんとか呼ぶのやめろや。」


「へ?どゆこと?」


「だぁかぁらぁー、下の名前で呼べって言ってんの!」


あれ。
田中くんって下の名前なんだっけ。

今まで聞いたことなかったな。



「じゃあなんも返事ねえから下の名前で決定な。」


「たくとって呼べよ。」


たくと?

初めて聞いた。。


「おい、聞いてんのかよ。....ま..み...」//


「は、はい!」

急に下の名前で呼ばれてびっくりした。

けど、田中くんの顔が一瞬赤くなってたのは、気のせい...?



その後私たちは黙々と作業をして、終わった頃にはもう日が暮れていた。


「よし。帰っぞー!」

田中くんが立ち上がって教室のドアのほうに向かった。

え、もう帰っちゃうの。


私は無意識のうちに田中くんのとこに駆け寄り、制服の裾を持っていた。


「..え。なに?」

田中くんが振り向いた。

「....た...たくと..」////

「へっ!?」

田中くん、じゃなくてたくとがビックリした声をあげた。

「...あ、ご、ごめん。急に名前で呼んじゃって。」


「あ、いや、ちょっとびっくりしただけだから。全然。」


たくとは私のほうを見ずに答えた。

なんか今日のたくとはいつものクールな感じじゃなくてちょっと新鮮。


数秒の沈黙。


「あ、えと、俺早く帰らねえとだから、じゃあな!」

たくとは焦った感じで教室を出て行った。


なんなんだ。あいつは。