優しすぎるから。



近くで滑っていた人達が「おぉ」と歓声をあげた。

その歓声を聞くと身体がゾクゾクと震える。
それもそうだ。
僕は元来、目立ちたがり屋の性格。

本当はこんなに人が多い中、ジャンプを跳んだら怒られる。


今 跳んだのは、ただのトリプルサルコウ(左足で後ろ向きに滑っている状態から右足を自分の左前方に振り上げ、左足で踏み切るジャンプ。三回転サルコウ)。

驚く程でもない。
それに…氷の表面がガタガタで、着氷に少しミスがでた。
試合でも、少々の減点は覚悟するくらいだ。

そんな僕のサルコウを実緒は、屈託のない笑顔で褒めてくる。
「ナイスサルコウですね!」

一瞬で今のジャンプをサルコウだと見抜くところは流石だが、実緒の言うような
“ナイスサルコウなジャンプ”
では、なかった。

自覚している。