「ふぅー、るーちゃん楽しかったね!」
「そ、そだね。」
「どうしたの?楽しくなかったの?」
「いや、楽しかったけど...」
「変なるーちゃん!」

いや、楽しかったよ?楽しかったんだけど、ハルの様子が気になって仕方なかったんだよなんて言えない。

「るー!」
嫌な予感...
「るーうー!」
的中。
「ひーくん」
「ありゃ、体育祭だったんだ~」
「うん、体育祭だった」
「あ、ほっぺに泥ついてるけど」
クスクスひーくんが笑う。
幼い子みたいな可愛い笑みだ。

「え、どこだろ鏡...」
「いいよ、俺がとってあげる。」
ひーくんの手があたしのほっぺに触る。
「ん、取れない...ハンカチ貸し手くれない?」
「はい」
「...よし、とれた!
てか、肌綺麗だねるー。」
「そーかな?」
「るー、可愛い。」
「え、ありがーーー」
「ルナ!!!!」

手を引っ張られる。
ハルがお怒りだ。

あたしのほっぺにハルが触った。

「七宮。お前、ルナのこと好きなの」
「好きだよ」
「え、ちょ」
「だめ。諦めて」
「ハル...」
「やだ。」
「ひーくん...ちょ、二人ともさ...」
「ルナ、行くよ」

あたしの手をハルが引っ張る。
「るー!」
ひーくんもつられて手を握った。
体がビクンッと反応した。
でも、二人とも気づかない。

怖い、怖い怖い怖い...
ハルもひーくんも男だ。
ハルは大丈夫なのに、なんでひーくんは...

「あ!男子がるーちゃん泣かせてる!!」
「本当だ!!」

女の子達があたしの事を引っ張る。
あたしは怖さのあまり過呼吸になってた。

「ムリ...ッげほげほ」
咳き込む。

「ルーー」
「るー、ごめん...男ムリなんだよな」

ひーくんがしゃがんであたしの頭に手を伸ばす。

嫌だ、嫌だ嫌だ。
あたしは後ずさりして息を整える。

ハルは申し訳なさそうにあたしを見てる。
あたしはフラッと立ち上がるとハルの前に立った。
ハルは目を見開いてビックリしてる。
あたしは思いっきりほほを叩いた。
「いてぇ...」
目から涙が次から次へと流れていく。
「ばかハル、気づけ...ばか、ばか...」
胸をトントンとゆっくり叩く。
ハルはどんな顔をしているだろう。
今はそんなの関係なかった。
ハルのばか。気づけ。機嫌直せ。ばか。
「ルナ。他の奴のことなんて見ないで俺だけを見ろよ。」

ハルがあたしに言う。
ハルがヤキモチ焼いてることなんて知ってた。
知ってたけど、言ってくれないから。
言って欲しかったから...

「ハルのばかぁ...」

ジャージをギュッとつかむ。
ハルが崩れ落ちる。
あたしも一緒になって倒れた。