朝起きて、ご飯食べて、歯を磨いて、朝風呂に入って、乾かして。

今日は香水なんかつけない。

ショートで短いなりに髪も結んでみよう。

今日はみんな楽しみ体育祭なんだから。

でもきっとハルならこう言うだろう。
「くだらない子供じゃあるまいし」

ハルは協力って言葉の付いた物が苦手だ。
苦手だし嫌いだ。

でも、あたしは協力っていい物だと思う。
汗かいて泥まみれになるのって案外気持ちいい。
そのあとみんなで頑張ったねって打ち上げしたりするの、すごく好き。

「よし。準備完了!」

勢い良くドアを開けて外に出る。
「おお、眩しいねぇ!」
太陽はサンサンって感じだ!
「よし、ハルを迎えに行くぞ!」

稻葉と書いてある表札のチャイムを押す。
バタバタとおばさんの足音が聞こえる。
「はいー」
「おばちゃん!るーだよ!」
「あら、春義ね?はるよしー!!いつまで寝てんの!!」
「あ、あたしが起こすよ。おばちゃん!」
「ありがとうね、毎日毎日。」
「いいのいいの!」

階段を登って右の部屋。
ここがハルの部屋だ。

おもむろにドアを開けてハルのベットに行く。
「ハルってば、寝坊助だね。」
布団をめくる。
「あれ?いない...」
「そこ、人の部屋にノックなしで入らない」
「ヒィッ!?」
後ろにハルが立っていた。
寝癖が付いててぴょこぴょこハネてる。

「早く着替えてよね!体育祭なんだから!」
「行きたくない。眠い。おやすみ。」
ハルはあたしの太ももを枕代わりに横になろうとする。
「ばか、やだよ。
ほら、早く着替えて。」

ハルのタンスからジャージを出して投げる。

「着替えさせて~気力ない~」
「ばかなことばっか言ってないで着替えて!!」
「ぁぁぁぁぁあ」

きっと、ハルの寝起きの悪さをみんなが見たら可愛いとか言うに違いないけど、あたしは見慣れた物で可愛いなんて少しも思わない。

「んー...ふぁぁ」

あたしはハルの部屋を見回す。

「参考書、参考書、参考書...ハル、やばいよこの部屋...」
「なにが」
「見回す限り参考書...あ、漫画あっ...」
「ん...ってわぁぁぁぁあ!!!!!」
硬直してるあたしを横目にベットの下に突っ込むハル。
「男ですから。」
一言残して、あたしには未知なエロ本はベットの下へと消えて行った。

「準備できたわけ?」
「できたけど、なに?」
「ちょっとこっちきなさい。」

ハルを鏡の前に座らせる。
ブラシで髪をとかしていく。
ハルが気持ち良さそうに目を閉じた。
あたしに寄っかかる。

「朝からグダグダすぎ。
寄っかかんないで、重い。」
「ルナ、俺の嫁になったら毎日髪とかしてよ。」
「ばかなこと言わないで。毎日なんて髪とかしてらんないよ。」
「ありゃ、嫁は否定しないんだ。」
「しないよ。地球が逆週するかもしれないし。」
「逆週しないとあり得ないわけ?」
あたしは頷く。
ハルが大きくあくびをして「あり得ないか」と少し笑った。