先ほどからずっと、ずっっと俺を呼ぶ声がする。

「ねえ」

ゆさゆさと揺さぶられる感覚も。

「ねー」

無視して布団を引っ張りあげる。

んもーと不満そうな声がして、ようやく諦めたのか気配が遠ざかっていった。


薄く目をあけ、また閉じ、布団の中の暖かさと暗闇をもう一度引っ張り上げて眠りに落ちた。










「…ふあ……ふ」

よく寝た。


あれから何時間経ったのか。カーテンを閉めているせいで薄暗く、今が昼か夜かも分からない。

「?」

ふと隣りに熱を感じる。



「…ぁ……」

きょろりと首を巡らせれば、俺の名をずっと呼んでいた声の主の姿があった。


「…」

どうしてこんなとこでこんな姿勢で寝れるんだろう…


その子はベッドに背中を預けて、 首をうなだれた格好で眠っていた。
投げ出された手の近くに分厚い本があったので、おそらくはそれを読んでいるうちに眠気に襲われたのだろう。

首、痛そう。


僅かに軋むベッドを鳴らさないようゆっくりと降り、静かに傍らに膝を立て座る。