杉浦くんの手と私の手。

自分でもびっくりするほど大きな声が出た。


クラスがシーンっと静まり返る。


なっちゃんは目を見開いて私に手を伸ばしたまま固まっている。


私はキョロキョロと辺りを見回して、右手を左手でつかんだまま教室から駆け出た。


早く!


早く誰もいないところに!


やだ!


このままはやだ!


私は強く右手の甲を左手でこすり続けて、廊下を走る。


角を曲がったとき、前を見てなかったせいで人にぶつかった。


『くっそ。誰だよ。廊下走ってる奴は』


あやちゃんの声だ。


私はバッと前を向く。


そこにはやっぱり、びっくりした顔のあやちゃんがいた。


「おい、キヨ。大丈夫か?」


そう言ってあやちゃんは私の肩に手を置いた。


『顔色が真っ青だぞ』


心配したあやちゃんの声。


私はもっと顔を青くした。


触らないで。


見ないで。


やだ。


いやだ。