家に帰ってから、制服を着替える間もなくベッドへダイブした。お布団が荒れかけた心すらも優しく包んでくれているような気がして、瑞希としてはこのまま寝てしまいたかった。
しかし現代はそう甘くないので、急いでスマホを手をする。
幸い、待ちうけなどには何の影響もない。連絡先の削除など一発だ。
問題は、公開されているものである。この時ばかりは、なんとかいう連絡ツールアプリを恨んだ。

「なんの画像にしよう」

アプリを開いて、プロフィール変更画面を開く。今の画像は、とても直視できない。
少し悩んで、女のモデルさんという、当たり障りのない画像に設定する。
部活で見ていないであろう彼の画像だけが、虚しく残った。

これでいいのだと自分を納得させると、彼女は眠ろうと枕を抱きしめる。

瞬間鳴り響く通知音。
見れば、こちらを心配する趣旨のことが、同じクラスの帰宅部の子から来ていた。
来るとは思っていたが、それいしてもとても早い。
心配するくらいなら、眠って忘れさせてくれとはさすがに言えず、適当に大丈夫とだけ打って電源を落とした。
障害はなにもない。

しかし、落ち着いていたはずの脳内で、『お試し』という言葉が頭をちらつく。

「……そんな風に、見えてたのかな」

瑞希は思う。1か月前、人生で初めて向けられた種類の好意。驚きはしたが、素直に嬉しかった。