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息の仕方も定かでなかったあの頃、たった一人の存在だけが生きる意味だった。
名前も、素性も、何も知らない。
けれども酷く強烈に惹かれた。
まるで静かに波打つ夜の海のような、凛とした雰囲気を放つその佇まいに、いつだって羨望していた。
その存在に触れた時から、孤独という闇から解き放たれたような気がした。生きているのに息苦しい世界で、自由と言う名の幸せを知った。
夜の海は、ただ穏やかに時を進める。
……
止まることの無いと、ずっとこのままでいたいと願ったあの時間は、呆気ない終焉と新たな檻を迎えた。
夜の海は、まるで静止したかのように時を止めてしまった……。

