次の日、斎藤は医務室で目を覚ました。昨夜珍しく飲みすぎたのか少し頭が痛い。そして喉が渇いている。

どうして医務室にいるのか覚えていない。
考えていると、

「大丈夫ですか?」
と、千花がお盆を持って入ってきた。
「一さん昨日飲みすぎてここにきて倒れたんですよ。」
とクスクス笑いながら、持ってきた粥と水を置く。
「そうだったか。かたじけない。」
「はい。一さん。」
と水を渡されたが、危うくこぼしそうになった。
「あぁっ。危ないですよ。こぼれるところでした。」
「……………。」
(今、俺は名で呼ばれなかったか?)
「一さん?」
「!!!」
斎藤は顔を真っ赤にさせた。
「いっ、いつからあんたは俺を名で呼ぶ?」
「昨日一さんが名前で呼んでくれと言ったじゃないですか?覚えてないですか?」
クスクス千花は笑っている。

(昨日………。全く記憶がない。)
「すまぬが俺は昨日のここにきた記憶がないのだ。俺は何か迷惑などあんたにかけなかったか?」
千花はパチクリと目を開き、うーんと考えてから
「何もありませんでしたよ。」
と微笑んだ。
「ならよかった。」
と、安堵している斎藤に千花は
「覚えていないようならやはり斎藤さんと名字でお呼びしたほうがいいですね。」
と言うと、斎藤は気まずそうに俯きながら
「いや、嫌でなければそのまま名で呼んでもらって構わない。」
と呟いた。