その間もう1匹の怪物が通貨の方へと体を向き鈍く滑って行った。地面に落ちている通貨を少しの間凝視し−怪物は、X状の足をバネの様に縮め、自分と通貨の距離をせばめて−一気に吸い込んだ。


ジョン・スミスは山々の間を駆け抜け、途中転び膝をすりむいた。後を振り向くが怪物はいない。まだ距離をとらなきゃ、出来るだけ離れたい事しかジョンの頭の中にはなく、こちらの世界の時間の進み方は知らないが、自分自身も空腹になってきているが、そんな事は二の次だと言わんばかりに走りに走った。


ある程度経ったところでジョンは空腹に耐え兼ねなくなり膝を着き鳴咽を漏らした。腹は空腹のあまりグーグーと腹の虫が泣いている。くそー、今頃はステーキを食べている筈だったのに。そう思う度に空腹は激しさを増し、脳が不思議に活性化してるみたいで、今自分がいる世界は夢の中ではなく、間違いなく現実と言う事も気付いてしまった。その事に気付きジョンは泣き崩れた。

「これは現実なのか?おかし過ぎる。何なんだ?」呟く様に言う。