またしても滑っている。音もなく。ジョンは震える足を制御しなんとか隠れた。そして恐ろしくても見たいという衝動に駆られ、人間の心理はなんて恐ろしいんだとジョンは思う。恐る恐る岩陰から覗いた。怪物は滑っている。一定の間隔をおいて止まる、そして、X状の足をバネの様に上下に動かし加速をつけたかの様にしてまた前進する。

異形もいいところだ。エイリアン、いや遊星からの物体Xすらも手に負えない。目は幾つもうごめいている。いつ自分を見るか分かららないと分かっていながらもジッと見入っている。後ろ姿しか見えない。少し安心する要因だ。怪物の背中は何かブニョブニョしているゼリー状の物がビッシリ付いている。怪物が動く度にそれはブニャブニャと震える様に動く。

怪物は鈍いスピードでどんどん離れて行く。が、その時だった。怪物の目玉がグルッと回転し、こちらを凝視したのだ。

「ヒッ!。」またしてもしゃくり声。

ジョンは凍り付いた。

近づいて来る。

滑りながら。

(逃げなきゃ喰われる!。)ジョンは心の中で自分に言った。