手をのばす

しばらくの間あてもなく歩いていると、いつの間にかざらついた気分は少し落ち着いていた。

気がつくと息が少し上がっている。

相当の速さで歩いてきたらしい。

自分で自分を完全に見失っていたことにあらためて気がついて、私は一人苦笑した。

「なんだかなあ・・・」

思わずつぶやいた。

途方にくれて、思わず空を仰ぐ。


太陽はビルに隠れて見えないけれど、沈む前に最後の力をふりしぼって空を茜色に染めている、そんな風に思えた。


無性に明るい場所へ行きたくなり、私は吸い込まれるようにデパートへと入る。


ぶらぶらと目的もなく歩き回る。

欲しいものが思いつかない。

沙耶とデパートへ買い物に来ると、

「あれ欲しい、これ欲しい」と何もかもが輝いて力強くいきいきと見えるのに。



今日は目に入る何もかもががらくたに見える。


結局歩き疲れただけで、私はデパートからも逃げるように外へ出るしかなかった。