高校の頃の自分を覚えているなんて・・・。

あんなにさえなくて暗い自分を、今目の前にいる人が知っている。

それは正直複雑だった。


もっと彼の口調が意地悪いものだったら、きっと嫌悪感が強くなって逃げるようにこの店を飛び出していたかもしれない。


でも、沢渡の言葉は悪意が感じられず、さらりとしていて小気味よかった。


裏の意味なんて、探る必要はないと思った。



すぐに別の店員が2杯目のコーヒーを運んできた。

するとソーサーに小さなクッキーが2枚添えてある。

1杯目にはなかったものだ。



「あれ?」と思って沢渡のいる方を見ると、遠くから笑顔で視線を返してくれた。



おまけしてくれたんだ、と気がついて私も微笑んだ。