ふと、今日のぴんと背筋を伸ばした沙耶を思い出した。

「ずいぶん落ち着いていたね。奥さん突然来たのに」

「うすうす気づいてたの。部長がこの前離婚話をしたって、メールで言ってたから」


もしかして、私が沙耶の携帯を見ていた時に受信したメールだろうか。

「奥さんの気性は聞いていたし、もしかしたらって覚悟はしてたけど。でも本当は心臓バクバクだったよ」

「そうは見えなかったけど」

「由紀子はびびってたよね」

「あれはびびるよ」


私たちは笑いあった。

心にさまざまなものを隠しながら笑っていた時とは違う。

解放して、通じ合ったと思わせる笑顔だった。



ひとしきり笑ったあと、沙耶が言った。





「私、会社辞めるんだ」