手をのばす

「どうしても、誰にもとられたくなかった。会社の他の女の子と親しく話されるのもいやだったの。でもね、その反面、うらやましかった。他の人との関わりで、どんどん変わっていこうとする由紀子が、うらやましくて、妬ましかった」


それは、私も同じだった。

同じ想いを持っていた。

そう伝えたかったのに、喉がぴたりと張り付いているようで、声にならない。


「私、由紀子になりたかった。はじめて本当に親しくなれたと思ったから。とても大好きだったから」

唇をぐっと噛みしめた。

沙耶の言葉がひとつひとつ、心に染み入る。


「指輪を渡したのも、いつでも私を忘れて欲しくなくて・・・・・・。部長と旅行に行っても、寝ても、由紀子のことを忘れたことない」