手をのばす

店の女の子。


すぐにいつかの女性スタッフが浮かんだ。

私と沢渡が話すのを、しきりに気にしていたあの子。



「あの女の人と真面目なお付き合いかは分からない。でも初めてあの店行ったときからどこかおかしいなって思って、それで何度も店に顔を出してみたの」


言葉を一度切って、沙耶は「同じもの」とウェイターに言った。


「そ、れで?」

口の中が乾いている。

呻くように尋ねた。



「その女の子にカマかけててみたの。いかにも沢渡さんを好きなふりしてね。そしたらすぐに敵意むきだしで教えてくれたわ。沢渡さんの彼女は私だって。手を出すなってね」