「そう、車買ったから披露しに来たんだよ。なのにあんたってばまた朝帰りなんかしちゃってさ」
「来るなら連絡しろよ。飲みに行ってただけだし」
美奈子さんの姿が見えた瞬間身体を隣の家の方に引っ込めたあたしのことは、美奈子さんは気付いてない様子で。
多分全君もあたしの存在まるっきり忘れてる気がする。
全君の後ろ姿しか見えないけど、心なしか嬉しそうな声色で。
「ちょうど良かった。おかんに頼もうと思ってたけどお前でいーや。隆んちにバイク取りに行くから乗っけて」
「うっわ、早速あたし足に使われんの」
「今まで散々俺を足に使ってたろーが。恩を返せ」
棘はあっても楽しそうな全君の後ろ姿。
二人の会話に胸が締め付けられるのを感じながら、反対方向へ歩き始めた。

