「…お前はいっつも笑ってるよな」 「そこに全君がいるから笑ってるの」 …にやけてるだけなんだけどね。 全君はまだなにか言いたげにあたしを見下ろしたけど、何も言わずに前を見て歩き始めた。 駅までの道をゆっくり歩いてくれて、話をしてくれた。 それだけのことが、嬉しくて嬉しくてたまらない。 お昼の少し混んでる電車の中で、ドア付近のつり革に手が届かないあたしは、ずっと全君の裾を掴んでた。 それでも、全君は何も言わなかった。 あたしはこの距離が嬉しくてもどかしくてどうしようもなかった。