cornering






「…まだ居たのかよ」




全君のそのあたしを見下ろす目とか、文句言いながらもあたしに構ってくれるところとか、歩き方や喋り方立ち振る舞いまで全部大好きなんだ。



「…全君もう帰るの?」



起きるなり眠たい目をこすりながらサイフとケータイをポケットに入れて、帰る支度を始めた全君。



「お前もさっさと帰れよ」



「い、一緒に帰る!!」



あたしと全君のお家最寄駅一緒だもんね!!



やっぱり全君はウンザリしたような顔をしたけど、付いてくるあたしに文句は言わなかった。



帰るとき真幸さんに挨拶して帰ると、



「畳で寝てもらって悪かったな」



と言って、こういうのに慣れているというか、普段潰れた人を匿ってるらしい。



「知り合いだけだけどな。終電なくなったり潰れたやつ自分家に泊めてくれるんだよ」



と、全君が教えてくれた。



「口悪いけどやっぱ真幸さんは優しいんだね」



「あの人はあー見えて結構世話好き。学生の頃からそーいう役自分から買って出たらしい」



「へぇー…、ふふっ」



「何笑ってんだよ気持ち悪」



全君が喋ってくれるのが嬉しくて。
なんて言ったらまたドン引きされるんだろう。