30差の片想い






「誰だよ、お前」


 あたしの腕を掴んでいる男は、イラついているのか低い声を出した。



 そこには、

 そこには……



「そいつ、俺の知り合いだから。離してやって」


「こいつ笑顔だったし。自分からついてきたみたいなもんだけど?」


「泣きそうな顔してるのに?」


「っ……」



 男達はバツの悪そうな顔をした。

 男達から離れるチャンスなのにあたしは、目の前にいる人物を見て驚いたまま動けなくて。


 目の前にいる〝その人〟は、男達を避け男に掴まれている腕と反対の腕を掴んで、自分の方へとあたしを引っ張る。


 もちろん、男は油断していたためあたしの腕はするりと男から離れた。




「……ってことで、さいなら」


 あたしの肩をギュッと掴んだ〝その人〟が男達に手をシッシッと、まるで去れとでも言うかのように振った。



「……くそっ」


「行こうぜ」


 男達はキッとあたし達を睨んだ後、ホームから消えて行った。