叶恋は俺を微笑みながらも真っ直ぐ見つめた。
確かに、俺の周りにはいつも誰かがいてくれた。
そんなの気にもしていなかったけど。
それってすごいことなのかな。
「最後まで守ってもらえなくても、守ろうとしてくれた想いだけで人はすごい救われるものだよ。……まあ、透はそれでも嫌なんだろうけど」
叶恋の言葉が、大きく胸に響く。
想いだけでも、その人は救われるのか?
それで、救うというのか?
……そうだよな。
俺が、自分の気持ちを言わないから。
だから、家族は壊れないんだよな。
……母と父は、笑ってられるんだよな。
「……あのね、あたしもセンセイに恋してから何度も後悔したの。好きになってしまった自分を責めたりすることもあった。嫌にもなる。でも……自分を嫌いになっちゃいけないと思う」
叶恋は少し切なそうに顔を歪めた。
「好きって気持ちは、時に残酷だけど素敵な感情だと思うの。そんな感情を持っている自分を、嫌いになっちゃダメだよ。特に透は、優しいし素敵な人。だから、自分を好きにならなくちゃっ!……良い所も悪い所も、好きになろう?」
叶恋は何度、涙を流したんだろう。
何度、苦しんだんだろう。
そんな風に思えるようになるまでに、何度も自分を嫌いになったんだよな?
だからこそ言える言葉……なんだろう?
「……叶恋」
「ん?」
叶恋が俺を見て、優しく微笑んだ。
初めて……かもしれない。
誰かの笑顔を見て、涙が出そうなほど綺麗だと思ったのは。


