30差の片想い









 俺は珍しく、大きな声を出してしまった。


 でも、そうなるのも無理はないだろう。

 だって何を隠そう、こいつが好きだと言ったのは、叶恋なのだから。




 一瞬にして確信する。

 コウタ、失恋決定。




「おい、なんだよその反応」


 コウタは俺を凝視しながらそう言った。



「い、いや……別に」


 お前、失恋確定だな。……なんてこと言えるはずもなく、俺はただ目を泳がせた。

 そんな俺を、コウタはもっともっと睨むように見る。



「お前、櫻井さんのこと知ってんのか?」


 ヤバい。

 お前失恋してるぞなんて言えないが、俺と叶恋のことを気づかれるのもダメだ。


 ……しっかり言い訳しないと。



「いや、俺叶恋なんて知らな……」


「今呼び捨てしたよな?おい、知り合いだろ」



 いつも呑気なコウタでも、その言葉は聞き逃さなかったようだ。

 これを、口が滑ったというのだろう。


 つい、いつもの呼び方で呼んでしまった自分に、腹が立った。