だけど、意味のないお節介だとは言い切れないかもしれない。
だって、それで離れたから、俺は大切な存在に気付けたんだから。
叶恋も、俺と離れてやっと好きだと気付いたってさっき言っていた。
きっとあの時間も、今となっては大事な時間だったのかもしれないな。
『手遅れになる前に気付けよ』
本当に、気付けて良かった。
こんな大切なものを俺は、もう少しで失くしていたかもしれなかったんだから。
隣でまだ楽しそうに笑っている叶恋を見つめて、俺は幸せを噛み締める。
ずっと、隣にいて欲しい。
ずっと隣で笑っていて欲しい、なんて本気で思ってしまう。
俺らしくないな。
でも、それはそれでいいかもしれない。
………なんて。
「ねえ、透」
一通り笑った叶恋が俺を見てきたため、俺はニヤけているであろう顔を必死に隠しながら返事をする。
「どうした?」
「あのさ、覚えてる?出会ったあの日、あたしが言った言葉」
「叶恋が言った言葉?」
「うん……あたしにとって、30はアンラッキーな数字だっていう…」
「ああ、俺、確か「俺も」って言ったんだっけ」